絵と地形地質 2 青木ヶ原樹海と貞観噴火
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- Опубліковано 9 лют 2025
- #地形地質#油絵#風景#富士山#青木ヶ原樹海#貞観噴火#溶岩流#本栖湖
BGM:Seaside Piazza - Aaron Kenny(youtube audio libraryより)
使用した折り紙:
・【折り紙】飛ぶ小鳥 • 【折り紙】飛ぶ小鳥 Origami Flyi...
・折り紙 鳥 紙で鳥を作る方法折り紙の鳥 • How to make a bird out...
所在地:山梨県富士河口湖町~鳴沢村付近
1.絵について
絵1 「広がる青木ヶ原樹海」(F8号横)
足和田山の三湖台から眺めた青木ヶ原樹海および背後の山地を描いています。中央奥に白く光っているのは本栖湖で、本栖湖を境にして左が天守山地・右が御坂山地でそれらの背後には南アルプスが連なっています。
貞観噴火の主体となる溶岩は絵の左方向の長尾山付近から右方向(精進湖など)に流れました。青木ヶ原樹海は絵の左側をわずかに高くして右側に傾いています。
絵2 「青木ヶ原の夕日」(F8横)
三湖台より眺めると10月頃の太陽は青木ヶ原樹海を挟んで本栖湖の後方の南アルプスの背後に沈みます。
絵3 「貞観噴火の溶岩流(想像図)」(F6号横)
溶岩や水蒸気等を噴出する長尾山噴火口や溶岩湖からあふれて流れ下る溶岩流の様子であり、資料を参考にして想像図として描きました。溶岩湖は長尾山から噴出した溶岩流が滞留したものです。溶岩は森林を巻き込み、接触して火災が発生しています。
2.地形
青木ヶ原樹海は富士山北西麓の山梨県富士河口湖町と鳴沢村にまたがり、ヒノキとツガが優占する常緑針葉樹林であり、今から約1,200年前の貞観噴火で流出した溶岩流上に広がっています。
貞観噴火(西暦864~866年で864年の噴火が主体)では富士山北麓の長尾山火口付近などから流出した溶岩流が富士山の裾野を流れ下り、本栖湖に流れ込むとともに当時の「せの海」に押し寄せてこれを現在の精進湖と西湖に分断しました。長尾山のふもと(標高約1,300m)から精進湖(標高900m)に至る溶岩の流下距離は約7kmです。その勾配は長尾山付近など高標高部でやや急ですが、標高の低下とともに緩やかになり、その平均勾配は3.3度程度です。溶岩流は凹地を埋めながら緩やかな傾斜地を流下していきましたが、溶岩の流動・冷却・固結に伴って凹凸の激しい地形が形成されました。また、溶岩流内部の高温で流動性の高い溶岩が抜けていった溶岩チューブ(溶岩トンネル)あるいは巨木の介在による溶岩樹形などが残されています。これらには天然記念物の富岳風穴(山梨県富士河口湖町)や鳴沢氷穴(山梨県鳴沢村)などがあります。
絵3「貞観噴火の溶岩流(想像図)」の中央部右側の小山は大室山(富士河口湖町;標高1,468m)です。貞観噴火(864年)で溶岩を噴出した長尾山も溶岩湖のダム堤の役割をした大室山、あるいは宝永噴火(1,707年)で形成された宝永山も側火山です。富士山には大小70以上の側火山があり、多くは富士山の山頂を通る北北西-南南東の方向にばらつきながら偏在しています。
3.地質
富士山の基盤はその裾野を西から北東にかけて縁取る天守山地・御坂山地・丹沢山地に分布している地質と同様で、中新世~鮮新世の海に堆積した地層と海底火山に由来する火山岩類であるとると考えられています。青木ヶ原樹海付近の基盤にはこれらの地質でも比較的新しい富士川層群が分布しているようです。
富士川層群は新第三紀中新世中期~鮮新世:1,200万年前~200万年前の海底チャネルに堆積した主に粗粒砕屑物より成る堆積物であり、海底チャネルは約1千万年間にわたって関東山地や御坂山地を供給源とする砕屑物の埋積地、さらに下流の富士川谷を経て富士川河口付近から駿河湾に至る海底の搬送路となっていたようです。なお、絵1のビューポイントとなる三湖台(足和田山)も富士川層群が分布しています。
富士山の南側に隣接する愛鷹火山は約40万年前に陸上の火山として噴火を開始したものと考えられており、富士山が噴火をする前からすでに広い範囲が陸化していました。
富士山の形成は約10万年前に小御岳火山の中腹から始まり、噴火を繰り返して古富士火山が成長しました。その後、古富士火山を覆い小御岳火山を内包した現在の新富士火山が形成されたと考えられています。一方、テフラ(火山灰などの火砕物)の調査研究によれば、大型成層火山が形成された時期のテフラを古期テフラと現在の火山が形成された時期のテフラを新期テフラとに区分し、爆発的活動のない静穏期に形成された富士黒土層(約1万年~7千年前)を両者の境界としています。
864(貞観6)年の貞観噴火で噴出した青木ヶ原溶岩は噴火口の異なる4つのグループに別けられ、噴火口の位置や時期を変化させながら新しい溶岩がその前の溶岩を覆うようにして斜面を流れました。青木ヶ原樹海表面を広く占めているのは長尾山火口列から噴出した長尾山溶岩グループであり、長尾山はこの一連の噴火の最終段階で形成された火砕丘です。
青木ヶ原溶岩は玄武岩質の溶岩であり、物性的にはハワイの溶岩と大きくは異ならないと考えられています。
4.植生
青木ヶ原樹海の気候帯は山地帯あるいは令温帯に属しており、落葉広葉樹林が本来の姿(極相)ですが、実際にはヒノキとツガが優占する常緑針葉樹林が形成されています。青木ヶ原樹海は溶けた高温の溶岩からスタートし、約1200年の時間経過とともに形成された樹林であり、土壌が未発達という特殊な条件下の樹林です。
植生調査によれば、ヒノキとツガの混交林は相対的に初期成長の早いツガが先に浸入して樹冠を形成するようなツガ優占林が形成され、その後ヒノキが侵入して現在のヒノキとツガの混交林が形成されたと考えられています。将来の植生については、ヒノキやツガを主とした混交林の場合はヒノキ林に遷移し、ヒノキを含む落葉広葉樹林で中・下層にヒノキやツガの小径木が見られるような場合はツガ優占林を経ずにヒノキ優占林に遷移するものと推定されています。なお、ヒノキは江戸時代ごろから明治に初めごろまで伐採されていましたが、土壌が薄いこと、水が得られにくいことなど、利用しにくい土地であったために人の関与は比較的少なく、広大な土地が樹林として残されてきました。
5.参考資料
・千葉達朗 鈴木雄介 荒井健一 冨田陽子 小泉市朗 中島幸信 小川紀一朗 2010 富士青木ヶ原における貞観溶岩流の計測 ~航空レーザー計測と赤色立体地図による詳細地形調査とボーリング調査~ 砂防学会誌 Vol.63,No.1,p.44-48
・高橋正樹 松田文彦 安井真也 千葉達朗 宮地直道 2007富士火山貞観噴火と青木ヶ原溶岩 「富士火山」 p.303-338 山梨県環境科学研究所
・松田時彦 2007 富士山の基盤の地質と地史 「富士火山」 山梨県環境科学研究所 p.45-57
・町田洋 2007 第四紀テラフからみた富士山の成り立ち:研究の歩み 「富士火山」 山梨県環境科学研究所 p.29-44
・城取陽一郎・山村靖夫・中野隆志・安田泰輔・大塚俊之 2017 青木ヶ原樹海針葉樹林の動態;林分構造の13年間の変化 富士山研究 第11巻 35~43頁
・大塚俊之・横澤隆夫 大竹勝 2008 富士北麓青木ヶ原溶岩流上における針葉樹林の構造と動態 植生学会誌 25:p.95-107
・Google Earth