「いただきます」と「ごちそうさま」の歴史を日本映画で検証してみた。~小津安二郎、木下恵介(木下惠介)、黒澤明(黒沢明)【意味がわかるとナニゲな日本史】「麦秋」原節子の、ぼっち「いただきます」が原型?

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  • Опубліковано 25 сер 2024
  • #日本映画 #小津安二郎 #木下惠介 #黒澤明 #原節子
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    「いただきます」を言う習慣は意外に新しいという説を、日本映画の巨匠、小津安二郎、木下惠介(木下恵介)、黒澤明(黒沢明)の作品で検証。原節子のぼっち「いただきます」に浮かび上がるナットクの事実!
    (監修・制作/歴史観測)
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    (内容紹介)
    これがおそらく、小津安二郎の映画の中でいちばん印象的な「いただきます」のシーンでしょう。1951年、昭和26年公開の「麦秋」(出演:原節子、笠智衆、淡島千景、三宅邦子、菅井一郎、東山千栄子、杉村春子、二本柳寛、佐野周二)です。主人公の紀子、原節子ですね。原節子が遅くに帰ってきて、台所でひとりでお茶漬けを食べるシーンです。
    この、食事の前に「いただきます」と声に出して言う習慣は、長く続く日本の伝統のように思えます。でも、いただきます、というのは、実はここ100年もないくらいの新しい習慣のようなんですね。篠賀大祐(ささかだいすけ)さんという方が2013年に出した「日本人はいつから「いただきます」するようになったのか」というとてもおもしろい研究本が電子書籍にあって、いただきます、という挨拶が世間に浸透し始めたのは昭和17年、1942年頃ではないか、としています。柳田國男(柳田国男)という民俗学者がこの年に、いただきます、という言葉がずいぶん広まっている、ということをエッセイに書いているんですね。ラジオの料理番組が、いただく、という言葉を乱発するので広まったというふうに柳田國男は言っていて、いただきますという挨拶に方言がないのはラジオで広まったからだろう、という篠賀大祐さんの分析はとてもおもしろいと思います。
    さて、そこで、この、いただきます、なんですが、その歴史を映画で検証してみました。小津安二郎、木下惠介、黒澤明の映画です。
    まず、いただきます、が広まったのは1942年頃だということなんですが、これ、1941年公開の小津安二郎の映画、「戸田家の兄妹」(出演:佐分利信、高峰三枝子、葛城文子、斎藤達雄)の1シーンです。お弁当を食べはじめるシーンなんですが、いただきます、とは言っていません。1942年公開の同じく小津安二郎の「父ありき」(出演:笠智衆、佐野周二)には、息子が父親の前でごはんを食べ終えるシーンがあります。ごちそうさま、と言っていませんね。ごちそうさま、というのは、江戸時代末期にはすでにあった食後のあいさつらしいのですが、いただきます、と、ごちそうさま、はセットで考えていいだろうと思います。ごちそうさま、と言っていないということは、おそらくは、いただきます、も言っていないでしょう。
    小津安二郎は、第二次世界大戦中は日中戦争に従軍して、一度は帰りますが、終戦間近にはシンガポール戦線に従軍していますから、1942年の「父ありき」のあとは、戦前には映画を作っていません。
    そこで、これは1944年公開の、黒澤明の「一番美しく」(出演:矢口陽子、入江たか子、志村喬)という戦中の日本を描いた映画なんですが、軍需工場の大食堂のシーンがあります。女子工員のリーダーが箸をとって食べ始めます。いただきます、とは言っていませんね。
    もうひとつ、1944年公開の映画に、木下惠介の「陸軍」(出演:笠智衆、田中絹代、東野英治郎、上原謙)という映画があって、家族で、釜揚げの手打ちうどんを食べるシーンがあります。息子たちふたりとも、ごちそうさま、と言っています。ということは、おそらく、いただきます、とも言っていたでしょう。
    小津安二郎の映画に初めて、いただきます、が登場するのは、1947年公開の「長屋紳士録」(出演:飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、吉川満子)です。小津安二郎の戦後第一作です。これは、見事な、いただきます、でしょう。
    1941年公開の「戸田家の兄妹」、1942年公開の「父ありき」では、いただきます、は言っていません。1944年公開の「陸軍」では、ちゃんと、ごちそうさま、と言っていますから、いただきます、も言っていたでしょう。そして、1947年の「長屋紳士録では、確実に、いただきます、と言っています。ですから、柳田國男がコメントした昭和17年、1942年を境にして戦中から戦後にかけて、いただきます、が広まったというのはまさにその通りなのでしょう。
    そして、1951年公開の小津安二郎の「麦秋」です。この、原節子の可憐な、いただきます、が決定的だったのではないでしょうか。今の私たちが言うのと同じ、とても現代的な、一人のときでも言う、いただきます、です。いただきますとごちそうさま、は、おそらく最も新しくできた日本の、きれいな習慣、伝統です。
    麦秋は、キネ旬という映画雑誌が毎年発表する興行ランキングの1951年度のトップをとった映画でした。1951年当時の日本の映画人口、つまり映画館に足を運んだ人の数は約8億人です。当時の日本の人口は8400万人でしたから、日本人ひとりあたり、年間に10本程度の映画を観ていたことになります。麦秋は、そういう時代のベストワン映画でした。

КОМЕНТАРІ • 30

  • @user-wq9bn8ch3f
    @user-wq9bn8ch3f Рік тому +8

    邦画を通しての「いただきます」「ごちそうさま」の考察、たいへん面白く拝見しました😊 映画というのはもちろんフィクションなんですけど、時代の風景を切り取った貴重な記録でもありますね

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +4

      波風立子さん、コメントをまことにありがとうございます。
      おっしゃる通りで、フィクションの映画であってもその当時の暮らしのリアルはわかる、というのは、源氏物語から平安貴族のリアルがわかる、というのと同じことかもしれません。

  • @nekonekonekonote
    @nekonekonekonote 8 місяців тому +1

    「いただきます」に方言がない
    なるほど〜。何かすごく納得してしまいました。

  • @ch4442
    @ch4442 Рік тому +6

    よく調べられましたね。
    とても興味深く視聴させて頂きました。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +1

      ボクの昭和CHさん、コメントをありがとうございます。まことに恐縮です。

  • @user-gv1yu8nq3h
    @user-gv1yu8nq3h Рік тому +3

    とても参考になりました、ありがとうございます。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому

      ヨコシマクロさん、コメントをまことに恐縮です。

  • @azumamurakami7842
    @azumamurakami7842 Рік тому +5

    ありがとうございます。
    たいへん参考になりました。登録しました。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому

      Murakamiさん、コメントをまことにありがとうございます。ご登録いただき、重ねて御礼申し上げます。

  • @user-ef8iy4me6f
    @user-ef8iy4me6f Рік тому +1

    「いただきます」はどちらかといえば、他家で食事などを「いただく」時の「挨拶」習慣から転化したものでしょう。「命を頂く」は後付けと思います。

  • @user-dg4hw5cr5k
    @user-dg4hw5cr5k Рік тому +1

    かあやんの「いただきます」は、ご祝儀の振る舞い酒を「ご馳走んなるよ」の意味だから食前の「いただきます」とはニャアンスが違う。33:01で、配給のお知らせに来た為吉に、かあやんが「夕べはご馳走さん」と言うのとセットになってるけど、これも昭和以前からある「ご馳走頂戴つかまつる」が「頂くよ」と「ご馳走さん」に分かれたものだから、食前食後には関係なかろう。56:11には大工の伜という設定の子供が「いただきます」と言っているから、生活水準の低い家庭でも、おそらく戦前戦中から「いただきます」を言う習慣があったのかもしれない。中流家庭をあつかった小津の愚作の「麦秋」を持ち出しても、当時全国的に「いただきます·ごちそうさま」が普及していたとはいえまい。キネ旬ベストワンといっても、それは選考委員が選ぶサロン的な順位付けであって、観客動員数で決まるものではない。同年の今井正の「どっこい生きてる」のように、満足に仕事も金も寝る所もない社会の底辺に生きる人びともまだ大勢いたのである。この映画の貧しい食事では、子供から「いただきます」という言葉は出てこない。

  • @user-cv8ey1tn5f
    @user-cv8ey1tn5f Рік тому +3

    戦争を経て穀物にも感謝する姿勢もあったかと思う、素晴らしき日本語ですね!
    方言もなくこの言葉が全国に伝わるのはその当時のラジオやら映画のおかげです❤

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +4

      恩田さん、コメントをまことにありがとうございます。
      おっしゃる通り、伝統というのは、新しく、自分たちの時代にも生まれるものなのだろうと思います。

  • @dd9843
    @dd9843 Рік тому +4

    畿内では「ごちそうさま」には「よろしゅうおあがり」と返しています。この返しも昭和に入ってからだったのでしょうか?今はあまり聞きませんが、、

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +2

      DDさん、コメントをまことにありがとうございます。
      「ごちそうさま」自体は江戸時代後半にはすでにあったとされているようですが、それへの返答句としての「よろしゅうおあがり」がいつから使われ始めたのかは未調査です。ただ、皆で食事を囲む「ちゃぶ台」ができたのが明治時代中頃、ちゃぶ台が広まったのが昭和初めで、「よろしゅうおあがり」は、こうした、皆で食事を囲む習慣ができて以降の返答句かもしれません。

    • @dd9843
      @dd9843 Рік тому +1

      @@rekishi-kansoku お返事ありがとうございます。同居していた祖父母はどちらも明治生まれで、私の一番古い記憶では、祖父だけは箱膳でご飯を食べていたと思います。祖母も箱膳を持っていましたが、それは使わず、ほかの家族と一緒にちゃぶ台を使っていました。懐かしい思い出です。

  • @user-in1of4qd3q
    @user-in1of4qd3q Рік тому +4

    小堺一機と高島忠夫・寿美花代夫妻の話じゃないのね……
    という戯れ言はさておき、
    全国的に普及したのは太平洋戦争と戦後に復活した学校給食制度が関係してはいないでしょうか?

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +3

      北の国のぷうこさん、コメントをまことにありがとうございます。
      篠賀大祐さんの研究書『日本人はいつから「いただきます」するようになったのか』によれば、1947年の1月から学校給食制度が始まり、1951年の学習指導要領の手引に、「食事の前後には挨拶をする」と書かれているが、その挨拶が「いただきます」「ごちそうさま」なのかは不明、ということです。おそらく、食事の前後の挨拶として「いただきます」「ごちそうさま」がすでに一般的になっていて、おっしゃる通り、この学校給食時の指導で全国的に普及したのでしょう。

  • @hitoshitakabayashi6759
    @hitoshitakabayashi6759 Рік тому +2

    「ベストワン」という言葉には違和感を感じますね。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +1

      Takabayashiさん、コメントをありがとうございます。ご指摘いただき、重ねて御礼申し上げます。

  • @user-mu9nw6up1m
    @user-mu9nw6up1m Рік тому

    1942年生まれ、「いただきます」、「ごちそうさま」は言わなかった。戦後学校給食から始まったという説納得します。というのも給食の経験が全くないので自宅でも言わなかった。お婆さん達は言ってたけど宗教的な所作だと思っていた。最近は赤ちゃんでも手を合わせて可愛い。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому

      白石勝義さん、コメントを誠にありがとうございます。貴重なお話かと思います。

  • @toushirouarai7258
    @toushirouarai7258 Рік тому

    いただきますは、尋常小学校で広めた挨拶で、浄土宗(浄土真宗?)で行われてた礼の採用だよ

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому

      Toshiro Araiさん、ご指摘をまことにありがとうございます。

  • @user-ek1xi7qn4n
    @user-ek1xi7qn4n Рік тому +2

    映画【寅さん】の中で(吉永小百合さん出演)おいちゃんの団子屋に訪ねて来た二人の女性が団子を出されて、食べる前に「いただきます」とは言わずに「ごちそうさま」と言うのを観て、そういうのもありなんだと初めて知りました。

    • @rekishi-kansoku
      @rekishi-kansoku  Рік тому +1

      成田さん、コメントを誠にありがとうございます。
      おっしゃる通り、食品のおみやげを受け取るときなども、ごちそうさま、と言う場合があるかと思います。

    • @user-ek1xi7qn4n
      @user-ek1xi7qn4n Рік тому +1

      @@rekishi-kansoku さん、わざわざご返事ありがとうございます、歴史観測さんの素敵なお人柄がわかります。
      チャンネル登録させて頂いたので、色々と見させていただきます、これへのご返事はお手数をおかけしますので結構ですよ。益々のご活躍をお祈り致します。