『ギターのための神楽歌 / 大坪純平(2023)』
本作品は、日本の神楽で使用される和琴や神楽笛から着想を得て、その奏法やフレーズを巧みに再構築し、新たなリズムと音響を目指している。作曲者の大坪自身がギタリストであることから、独自の変則調弦を設定し、新しい「ギタリスティック」を念頭に置いて作曲された。作品は日本的な音階を基調とした「歌（Cancion）」と、急速なテンポで躍動しながらうねるような「舞（Danza）」の二楽章形式で構成されている。被献呈者の小暮が演奏することを念頭に置き、2023年5月に作曲された。
「歌と踊り」という組み合わせは、スペインの音楽文化において彼らの魂とも言えるものである。ギターの故郷であるスペインの音楽的遺産を土台に、日本の神楽のエッセンスを融合させた本作は、異文化の要素がまるで空間を超えて響き合うかのような新たな音楽表現を追求している。いまや世界中に広まり、無国籍とも言えるギターという楽器を通じて、邦楽的な切り口からそのアイデンティティを炙り出そうとしているとも言えよう。
大坪は日本人ギター作曲家として、新しい時代の扉を開いたようだ。
2024.4.20　ギターアンプラグド（国分寺市立いずみホール）より
演奏：小暮浩史
使用ギター：ジャン＝ノエル・ローエ 2013年
撮影：楠ギター音楽教室　
『Kagura-Uta for Guitar / Junpei Ohtsubo (2023)』
This piece draws inspiration from the Japanese kagura instruments, such as the wagon and kagura flute, skillfully reconstructing their playing techniques and phrases to pursue new rhythms and soundscapes. Since the composer, Otsubo, is himself a guitarist, he set up a unique alternative tuning and composed the piece with a new "guitaristic" approach in mind. The work is structured in two movements: "Song (Cancion)," which is based on a Japanese-like scale, and "Dance (Danza)," which features a rapid, swirling tempo. It was composed in May 2023 with the intention that it be performed by Hiroshi Kogure, the dedicatee.
The combination of "song and dance" is something that could be said to be the soul of Spanish musical culture. Building on the musical heritage of Spain, the homeland of the guitar, this piece fuses the essence of Japanese kagura, seeking a new musical expression where elements of different cultures resonate as if transcending space. Through the globally spread and now almost nationality-free instrument of the guitar, it attempts to reveal its identity from a Japanese musical perspective.
Otsubo, as a Japanese guitar composer, seems to have opened the door to a new era.
2024.4.20 Guitar Unplugged (Izumi Hall, Kokubunji City)
Performance by: Hiroshi Kogure
Guitar used: Jean-Noel Rohé 2013
Filming by: Kusunoki Guitar Music School
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小暮浩史（Kogure Hiroshi）
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1988年、東京都生まれ。16歳より独学でアコースティックギターを始め、 その後18歳より本格的にクラシックギターを始める。これまでギターを高田元太郎、福田進一各氏に師事。
マヌエル・バルエコ、エデュアルド・フェルナンデス、パヴェル・シュタイドル、ゾーラン・デュキッチ、各氏ほか国内外の演奏家のマスタークラスを多数受講している。
NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」にゲスト出演するなど、現在は東京を基盤に全国各地でリサイタルや演奏活動を行っている。世界的ギタリスト福田進一氏から「晩学の天才」と称され、２０１３年にデビューアルバム『舞踏の旋回』をリリース。早稲田大学教育学部社会科学科を卒業後、2014～2019年までフランスに留学。ストラスブール音楽院にてギターをデュオ・メリス（アレクシス・ムズラキス、スサナ・プリエト両氏）、テオルボおよび古楽演奏解釈を今村泰典氏に師事。
2016年度文化庁新進芸術家海外研修員。第60回東京国際ギターコンクール優勝。
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