Ruo Ando - 安藤類央 (国立情報学研究所 | 元 情報通信研究機構)
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「強さと脆さ」I 母なる自然に学ぶ
セクション1では「母なる自然に学ぶ」というテーマについて語られています。後に「反脆弱性」にも触れる倫理効果の話をしています。例えば、数十億年生き延びてきたシステムは、たった100年のものよりもはるかに強固です。「現存する最後のシステム」といえば、それは母なる自然です。自然は複雑なシステムであり、相互依存、非線形性、ロバスト性、生態系計画が絡み合っています。生物界において知恵を与える存在は、自然と年老いた人たちだと述べられています。
一方、現代社会はこれとは逆の方向に進んでいます。保険として機能する「無駄」を削ることが行われています。例えば、人間の身体には肺や肝臓が二つずつありますが、これを削れば事故や抑制の事象に対して脆弱になります。また、グローバリゼーションは比較や分業化を極限まで進め、一見効率的に見えますが、特化しすぎることでリスクにさらされやすくなります。一箇所で不具合が生じれば、それがシステム全体に波及する危険性をはらんでいます。
「現代社会のリスク」
グローバリゼーションや借金も現代社会の大きなリスクです。GDPを上げるために借金をし、スピードを上げる行為は、将来に過剰な期待を抱くことを意味します。この予測が外れた時、社会全体に大きな打撃を与えることになります。また、組織が大きくなると効率性が失われ、不測の事態に脆弱になる点も指摘されています。
「自然の教訓」
自然は人間が登場する以前から存在しており、その複雑性と非線形性を持つシステムは人間の知恵をはるかに凌駕しています。自然のシステムには「倫理効果」があり、人間がこれを理解し適応することが求められます。しかし、人間が自然を傷つけている証拠も、それを傷つけていない証拠も明確には示されていません。この点において立証責任は生態系を守ろうとする側にはなく、むしろ生態系を破壊する行為を行う側にあります。
「非線形性とランダム性の活用」
自然は非線形性とランダム性を活用していますが、これを人工的に抑え込もうとする現代社会のアプローチは危険です。特にグローバリゼーションが進むと、島嶼のような小さな地域でも副作用が顕著に現れ、ウイルスの拡散など、惑星規模のリスクが生じます。これに対し、不確実性を飼い慣らし、変動性やランダム性をうまく活用する仕組みが必要です。
最後に、次作「反脆弱性」では、自然の変動性やランダム性を抑え込むのではなく、それを利用する方法について詳しく議論されています。障害や変動をエネルギーに変え、システムをより強固にする戦略が提案されています。このようなアプローチは、自然との共存を目指すうえで重要な指針となります。
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